スタートアップの資金調達ラウンドとは?シード〜シリーズA・B・C・Dの違い・調達額・投資家を徹底比較
スタートアップの資金調達ラウンドとは、シード→シリーズA→B→C→Dと進む段階区分です。シリーズA とはPMF達成後の本格スケール調達で、調達額は2〜10億円が目安。シード(中央値4,000万円)からシリーズC以降(数十億円〜)までの違いを、調達額・投資家・資金使途の比較表と2025年日本の実績で解説します。

スタートアップの資金調達ラウンドとは、 事業フェーズに応じて段階的に外部資本を調達する区分 のことです。シード→シリーズA→B→C→Dの順に進み、調達額・投資家タイプ・求められるKPIがそれぞれ変わります。
本記事を読むと、以下のことがわかります。
- 各資金調達ラウンドの定義と違い(比較表付き)
- シードからシリーズC以降までの調達額・評価額の目安(日本の中央値)
- ラウンドごとの主な投資家タイプと評価基準
- 2025年日本市場の実態とプレシリーズA・ダウンラウンドの扱い
資金調達ラウンドとは何か
資金調達ラウンドとは、 スタートアップが事業の成長段階に応じて段階的に外部資本を調達する仕組み です。投資ラウンドとも呼ばれます。単なる融資とは異なり、投資家は株式(優先株式)と引き換えに資金を提供し、将来のIPOやM&Aでのリターンを期待します。
「シリーズA」「シリーズB」というアルファベット名称は、発行する 優先株式の種類(A種優先株、B種優先株…) に由来します。1回目の本格調達でA種優先株を発行するためシリーズAと呼ばれ、以降アルファベット順にシリーズB・C・Dと進みます。
ラウンドが進むにつれて、以下の3点が変化します。
- 調達規模が拡大する(数千万円 → 数十億円〜)
- 投資家が求める事業の成長実績(トラクション)のハードルが上がる
- 株式の希薄化(ダイルーション)が累積する
各ラウンドの比較一覧

| ラウンド | 主な目的 | 調達額の目安(日本) | 評価額の目安 | 主な投資家 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|---|---|
| プレシード・シード | アイデア検証・MVP開発・PMFの模索 | 〜1.5億円(中央値 約4,000万円) | 1〜5億円 | エンジェル投資家・シード特化型VC | 〜1.5年 |
| シリーズA | PMF達成後の本格スケール・初期顧客基盤の拡大 | 2〜10億円程度 | 5〜30億円 | VC・事業会社 | 1〜2年 |
| シリーズB | 急速な事業拡大・マーケティング強化・組織拡大 | 数億〜数十億円 | 30〜100億円 | VC・CVC(コーポレートVC) | 1〜2年 |
| シリーズC以降 | 黒字化・新規事業展開・海外進出・IPO準備 | 数十億円〜 | 100億円〜 | メガVC・海外VC・PEファンド | 2年〜 |
※調達額・評価額は事業領域・ディープテック係数によって大きく異なります。シード中央値はJIC(産業革新投資機構)『スタートアップ・ファイナンス市場レビュー 2024H1』(2024年9月公表)、シリーズAの定義(評価額5億円以上)はINITIAL『Japan Startup Finance』の基準に基づきます。
シード・プレシードラウンドとは
シードラウンドとは、 事業アイデアの検証とMVP(Minimum Viable Product)開発を目的とした最初期の資金調達 です。プレシードと呼ばれるさらに初期の段階を設ける場合もあります。
この段階では売上がほぼゼロのことも多く、投資家は チームの実行力・市場の大きさ・課題の深刻さ を主な判断基準とします。
JIC(産業革新投資機構)が公表した2024年上半期のデータによると、日本のシードラウンドにおける1社あたりの調達額中央値は 約4,000万円 、平均は 約1.1億円 (出典:JIC『スタートアップ・ファイナンス市場レビュー 2024H1』2024年9月公表)です。ディープテック領域では同じシード段階でも数億円規模の調達事例が増えています。
シード期に経営者が意識すべき最重要指標は ランウェイ (手元資金 ÷ 月次バーンレート)です。投資家との交渉から着金まで平均3〜6ヶ月かかるため、ランウェイが6ヶ月を切る前に次の調達活動を開始する必要があります。
シリーズAとは
シリーズAとは、 スタートアップがPMF(Product Market Fit)を達成し、事業を本格的にスケールさせるための最初の本格資金調達ラウンド です。A種優先株式の発行を伴う点が名称の由来です。
投資家はシードとは異なり、 客観的なトラクション(成長実績) を厳しく評価します。具体的には以下のKPIが重視されます。
- 月次経常収益(MRR)の成長率
- 顧客維持率(リテンションレート)
- 顧客獲得単価(CAC)と顧客生涯価値(LTV)の比率
LTVとCACのバランスの目安についてはLTV/CAC比率の目安は3倍?新規事業の成長を加速させる計算方法も参考になります。
日本では2024年のシリーズAラウンド全体の調達総額は1,684億円(501社が調達)でした(出典:スピーダ スタートアップ情報リサーチ『Japan Startup Finance 2025』2025年公表)。INITIALの過去データではシリーズA到達までの期間中央値は約42ヶ月で、調達後評価額5億円以上がシリーズAの定義基準となっています。
シリーズAラウンドの主な資金使途は、 エンジニアや営業担当者の採用 、 マーケティング施策の本格投資 、 プロダクトの機能拡充 の3点です。「この資金でどのマイルストーンを達成するか」を投資家に論理的に提示できることが調達成功の鍵となります。
プレシリーズAと呼ばれる中間ラウンドを設ける企業もあります。シードでPMFの途上にある企業がシリーズA基準に届く前に追加資本を調達するケースで、調達額は数千万〜1億円程度が多いです。
シリーズBとは
シリーズBとは、 確立されたビジネスモデルをさらに急拡大するための資金調達ラウンド です。この段階では一定の顧客基盤が存在し、投資家は「スケールできるか」を判断します。
資金の主な使途は以下の3点です。
- 大規模なマーケティング・広告投資
- 営業チームの拡充と全国展開
- プロダクト開発の加速と新機能リリース
シリーズBからはCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)と呼ばれる事業会社系の投資家が加わるケースが増えます。CVC投資家はリターンだけでなく、 自社事業とのシナジー を重視するため、単なる資金以上の業務提携や顧客紹介などのバリューアドが期待できます。
シリーズC以降(C・D・E)とは
シリーズCとは、 経営が安定フェーズに入り、IPO準備・新規事業・海外展開などの大型投資を行うラウンド です。
このラウンドまで到達した企業は財務的に黒字化、もしくは黒字転換が視野に入っていることが多く、投資家はより大規模なリターンを狙います。海外VCや大型ファンド、プライベートエクイティ(PE)ファンドが参入するのもこの段階の特徴です。
シリーズC以降も「シリーズD」「シリーズE」「シリーズF」と続く場合があります。シリーズD以降は主にIPO前の最終調達やM&A前提のグロース投資として位置付けられることが多く、多くのスタートアップはシリーズC〜D前後でIPOかM&Aの選択を迎えます。
投資家タイプと各ラウンドの対応
| 投資家タイプ | 特徴 | 主に対応するラウンド |
|---|---|---|
| エンジェル投資家 | 個人資産で出資。経営アドバイスやネットワーク提供が強み | プレシード・シード |
| シード特化型VC | 小口・早期投資に特化。PMF前の企業を対象 | シード・シリーズA手前 |
| ベンチャーキャピタル(VC) | ファンド資金を運用。IPO・M&Aでのキャピタルゲインを狙う | シリーズA〜C |
| CVC(コーポレートVC) | 事業会社の投資部門。シナジー・協業を重視 | シリーズB〜C |
| PEファンド・海外VC | 大型資金。IPO前の成長加速や国際展開に対応 | シリーズC以降 |
スタートアップの資金調達を成功させるには、自社のフェーズに合った投資家タイプへのアプローチが不可欠です。投資家の評価基準と判断軸についてはスタートアップが投資を獲得する6つの基準で詳しく解説しています。
調達タイミングの見極め方
資金調達の開始タイミングを誤ると、不利な条件での調達や事業停滞につながります。以下の2指標を常にモニタリングしてください。
ランウェイ(資金枯渇までの期間) 現在の現預金残高 ÷ 月次バーンレート(純現金流出額)で算出します。ランウェイが 6ヶ月を切る前 に調達活動を開始するのが鉄則です。余裕があるうちに交渉を始めることで、有利な条件を引き出せます。
トラクション(成長実績) 次のラウンドの投資家が納得する数値実績が揃ったタイミングが、最も有利な調達機会です。MRR成長率・ARR・顧客数など、ラウンドごとの標準的なKPI水準を事前に把握しておきましょう。
スタートアップとベンチャーの概念的な違いや、EXIT戦略まで含めた資金調達の全体像についてはスタートアップとベンチャーの決定的な違いもあわせて参照ください。
2025年の日本における実態とダウンラウンド
スピーダ スタートアップ情報リサーチが公表した『Japan Startup Finance 2025』によると、2025年の日本スタートアップの資金調達総額は 7,613億円 (デット除く)で前年並みを維持しました。
一方で投資家の選別が厳格化しており、以下のトレンドが顕著です。
- シリーズA調達社数は2024年501社から2025年は微減傾向
- 100億円超の大型調達が少ない時期が続いた(2025年上半期)
- ディープテック・生成AI領域はシードから億円単位の調達が増加
- 既存投資家の評価額より低い「ダウンラウンド」を受け入れる事例が増加
ダウンラウンドとは、前回ラウンドより低い評価額(バリュエーション)で次回調達を実施することを指します。既存株主の希薄化が大きくなるためできるだけ回避すべきですが、市況悪化時には事業継続のために選択する企業が増えています。
これは「数を増やす」から「質の高い企業を選ぶ」への投資家マインドシフトを示しています。トラクションの証明がますます重要になっています。
よくある質問
スタートアップの資金調達ラウンドとは何ですか?
スタートアップの資金調達ラウンドとは、事業の成長段階に応じて段階的に外部資本を調達する区分です。一般的にシード→シリーズA→B→C→Dの順に進み、ラウンドごとに調達額・投資家タイプ・求められるトラクションのハードルが変わります。
シリーズAとシリーズBの具体的な違いは何ですか?
シリーズAはPMF達成直後の初期スケールフェーズで、数億円規模の調達が中心です。シリーズBはビジネスモデルが確立した後の急拡大フェーズで、数億〜数十億円規模になります。投資家に求められるトラクションの水準もシリーズBの方が高く、既存顧客の継続率や収益成長の安定性が重視されます。
プレシリーズAとは何ですか?
プレシリーズAとは、シードとシリーズAの中間に設けられる調達ラウンドです。PMFの途上にある企業がシリーズAの投資基準に届く前に、追加の検証資金を確保する目的で活用されます。調達額は数千万円〜1億円程度が一般的です。
シリーズAに到達するための目安はありますか?
業種によって異なりますが、SaaSの場合はARR(年間経常収益)1〜3億円、月次成長率10〜20%程度が一つの目安とされています。INITIALの定義では調達後評価額5億円以上がシリーズAの基準です。より重要なのは「なぜ今、この市場で、このチームが勝てるか」という論理的な説明力です。
資金調達と銀行融資の違いは何ですか?
銀行融資は返済義務があり利息も発生しますが、株式の希薄化がありません。VC等からの出資(エクイティ)は返済不要ですが、株式を渡すため議決権や配当権限が生まれます。どちらが有利かは事業フェーズや成長計画によって異なります。
ダウンラウンドとは何ですか?
ダウンラウンドとは、前回ラウンドより低い評価額で次回の資金調達を実施することです。既存株主の株式希薄化が大きくなり、シグナルとしてもネガティブに受け取られるため、可能な限り回避すべきですが、市況悪化時には事業継続のために選択する企業が増えています。
まとめ
スタートアップの資金調達ラウンドとは、シード→シリーズA→B→C→Dと事業フェーズに応じて進む段階区分です。それぞれ「検証→スケール→拡大→安定→IPO準備」という事業フェーズに対応しており、求められるトラクションと投資家タイプが段階ごとに変わります。
シリーズAは2〜10億円、シリーズBは数億〜数十億円、シリーズC以降は数十億円〜が日本での目安です。2025年の日本では調達総額7,613億円が維持されつつも、投資家の選別は厳格化しています。自社のフェーズに合った投資家を選定し、客観的な数値実績を準備した上でラウンドに臨むことが、資金調達成功の最短経路です。


ねこ太郎
独立系ベンチャーキャピタルでの投資業務を経て現在は研究機関で起業家の成功要因を分析する専門家です。キャピタリスト時代に数多くのアプリやウェブサービスの立ち上げを支援してきた豊富な経験を持っています。その現場での知見と最新の研究データを掛け合わせゼロからのビジネス立ち上げを成功に導くための実践的なノウハウを発信しています。
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