商標登録の確認で失敗しない!特許庁の無料検索と区分の選び方3ステップ
新しいサービス名を決める際、他社との重複を防ぐための商標登録の確認は必須です。本記事では、特許庁の無料データベース「J-PlatPat」を使った検索方法から、費用を最適化するための正しい区分の選び方まで、初心者が失敗しないための具体的な手順をわかりやすく解説します。

新規事業やアプリ開発を進める中で、自社のブランド名やサービス名が他社の商標を侵害していないか、不安を感じる方は少なくありません。事前に商標登録の確認を怠ると、リリース後に名称変更を迫られるなどの致命的なリスクが生じます。本記事では、特許庁のデータベースを使った無料検索方法から、類否判断の基準、適切な区分の選び方まで、具体的な手順を解説します。
商標登録の確認が不可欠な理由
新規事業を立ち上げる際、自社のブランドやサービス名を守るための商標取得は欠かせないステップです。まずは市場の動向や手続きにかかる期間など、基本的な前提知識を整理しましょう。本セクションでは、商標登録の重要性とスケジュール感について解説します。
年間20万件の出願が示す市場の活発さ
特許庁の統計によると、令和4年(2022年)の商標登録出願件数は198,393件に上り、過去数年間も20万件前後で推移しています(出典: 統計情報 - 特許庁)。この膨大な数字は、多くの事業者が市場に参入し、自社のブランド価値を法的に保護しようと活発に動いていることを示しています。
新しいアプリやWebサービスをローンチする際、魅力的なサービス名を思いついても、すでに他社が同じ名前や似た名前で商標を取得しているケースは少なくありません。競合他社とのトラブルを未然に防ぎ、安心してビジネスを展開するためにも、事前の商標登録の確認は非常に重要なプロセスとなります。
出願から登録までにかかる期間
商標の手続きにおいて初心者が陥りやすい失敗の一つが、スケジュールの見積もり甘さです。商標登録出願から登録までの期間は、出願後の審査から登録査定まで、標準で約8~10ヶ月程度かかります(出典: 商標登録出願から登録までどのくらいの期間がかかりますか? - 特許庁)。
サービスのリリース直前に出願手続きを始めても、公開日までに権利を確保することは困難です。事業計画を立てる際は、このリードタイムを逆算し、開発の初期段階(要件定義やMVP開発のフェーズ)で調査と出願を済ませておくことが理想的です。
J-PlatPatを使った無料検索の手順
商標の調査は、専門家に依頼する前に自分で行うことが可能です。特許庁が提供する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」を利用すれば、誰でも無料で商標登録の状況を検索できます。ここでは、初心者でも迷わない具体的な検索方法を3ステップで紹介します。
検索手順の3ステップと調査のコツ
J-PlatPatの「商標検索」メニューから、以下の手順で進めるのが基本です。
- 「商標(検索用の文字)」に候補名を入力する 自社のサービス名やアプリ名を入力します。このとき、完全一致だけでなく「〇〇ペイ」のような名称なら、「〇〇」の部分だけでも検索し、似たサービスがないか確認しましょう。
- 「称呼(読み方)」でも検索する スペルが異なっていても読み方が同じであれば類似商標とみなされるリスクがあります。カタカナで読み方を入力し、同じ音の商標がすでに登録されていないか調べます。
- 該当する「区分」を指定して絞り込む 「類似群コード」や「区分」の欄に自社の事業領域を入力し、無関係な業界の同名商標を除外します。
表記揺れを防ぐための検索例
ただ思いついたキーワードを入力するだけでは、思わぬ類似商標を見落としてしまうおそれがあります。網羅的に調べるためには、以下のように条件を変えて複数回検索することが重要です。
- アルファベット表記: 「Tech Startup」
- カタカナ表記: 「テックスタートアップ」
- ひらがな表記: 「てっくすたーとあっぷ」
このように表記を変えつつ、特許庁の公式データベースをくまなく検索することで、競合とのトラブルを未然に防ぐことができます。独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供しているマニュアルを参照すれば、さらに高度な検索機能を活用可能です。
類似商標の判断基準
検索を行う際、入力したキーワードと完全に一致する商標がなかったからといって、すぐに「登録可能」と判断するのは危険です。商標の類否判断(似ているかどうかの判断)は、単純な文字の一致だけで決まるわけではありません。どのような基準で類似とみなされるのか、具体的な要素を見ていきましょう。
称呼・外観・観念の3要素
特許庁の審査基準によれば、商標の類否判断は、商標の構成や取引の実情等を総合的に考慮して行われます。特に、以下の3つの要素が類似するか否かが重要な判断材料となります(出典: 商標審査基準 第3条第1項第11号 - 特許庁)。
- 称呼(読み方): スペルが異なっていても、発音したときの音が似ている場合は類似とみなされる可能性があります。
- 外観(見た目): フォントや図形化されたロゴのデザインが視覚的に似ているかどうかが問われます。
- 観念(意味合い): 言葉の持つ意味が共通している場合(例:「王様」と「キング」など)も類似と判断されることがあります。
たとえば、英字の「APPLE」とカタカナの「アップル」は、見た目は異なりますが、読み方や意味合いが共通しているため、類似商標と判断される可能性が高くなります。多角的な視点での調査が必要となるため、自社のネーミングと似た響きや意味を持つ言葉もあわせて検索することが重要です。
適切な区分の選び方と費用
商標権は、すべての商品やサービスに対して無制限に効力を持つわけではありません。「どの商品・サービスでその商標を使用するか」を指定する必要があり、これを商標の「区分」と呼びます。ここでは、失敗しない区分の選び方と、それに伴う費用の変動について解説します。
審査基準に基づく区分の見つけ方3ステップ
区分は第1類(商品)から第45類(サービス・役務)まで細かく分かれています。自社のビジネスがどれに該当するのか、以下の手順で見極めましょう。
- 提供する「モノ」か「サービス」かを分類する 自社が提供する価値が、具体的な商品(第1類〜第34類)なのか、サービス(第35類〜第45類)なのかを整理します。
- J-PlatPatの「商品・役務名検索」を活用する J-PlatPat内の機能に事業のキーワード(例:「ソフトウェア」「衣類」「飲食」)を入力すると、関連する区分と類似群コードの候補が一覧で表示されます。
- 特許庁の審査基準で詳細を確認する 特許庁が公表している「類似商品・役務審査基準」と照らし合わせ、その区分が自社の事業内容と完全に一致しているかを最終確認します。
IT・アプリ開発における区分の具体例
新規事業でWebサービスやアプリを立ち上げる際、よく使われる区分には以下の2つがあります。
- 第9類(商品) :スマートフォンにダウンロードして使うアプリそのものや、電子計算機用プログラムが該当します。
- 第42類(役務) :クラウド上で提供するSaaS型のWebサービスや、システムの設計・作成・保守に関するサービスが該当します。
自社が「インストール型のアプリ」を提供するのか、「ブラウザで利用できるクラウドサービス」を提供するのかによって必要な区分が異なります。両方の形態で提供する場合は、第9類と第42類の両方を取得するのが安全です。
区分数と費用の関係
適切な区分を選ぶことは、開発や事業立ち上げの予算管理にも直結します。商標を登録する際の特許庁への納付金は、出願料と登録料に加え、区分の数に応じて増加するためです。
| 費用項目 | 計算式(区分数による変動) | 1区分の費用例 | 2区分の費用例 |
|---|---|---|---|
| 商標登録出願料 | 3,400円 + (8,600円 × 区分数) | 12,000円 | 20,600円 |
| 商標登録料(10年分一括) | 32,900円 × 区分数 | 32,900円 | 65,800円 |
| 合計(特許庁への印紙代) | - | 44,900円 | 86,400円 |
(出典: 商標登録に係る料金 - 特許庁)
区分数が1つ増えるごとに、出願料で8,600円、登録料で32,900円が追加で発生します。初期の資金が限られている起業家や新規事業の立ち上げフェーズにおいては、まずは現在のコアビジネスに直結する必須の区分に絞って出願する戦略も有効です。
資金繰りに不安がある場合は、起業の不安を解消!返済不要な補助金とクラウドファンディングを活用した資金調達戦略や、新規事業の資金調達方法とは?クラウドファンディングで成功する5つのポイントを参考に、利用できる制度がないか検討するのも事業を安定させる手段です。
よくある質問
商標登録の確認や手続きに関して、新規事業の担当者からよく寄せられる疑問とその回答をまとめました。事前に疑問を解消し、スムーズな手続きを進めましょう。
商標登録の確認は誰でも無料でできますか?
はい、特許庁が提供する「J-PlatPat」を利用すれば、誰でも無料で検索が可能です。操作マニュアルも公開されているため、初心者でも手順に沿って確認できます。
類似商標が見つかった場合はどうすればよいですか?
称呼・外観・観念のいずれかで類似していると判断される場合、登録が拒絶される可能性が高くなります。サービス名の変更を検討するか、専門家である弁理士に相談して詳細な見解を求めることをおすすめします。
まとめ
新規事業を成功に導くためには、ブランドやサービス名を法的に保護する商標登録の確認が不可欠です。本記事では、以下のポイントを解説しました。
- J-PlatPatを活用した無料検索で、先行商標の有無を自ら調査する
- 称呼・外観・観念の3要素から多角的に類否判断を行い、リスクを回避する
- 特許庁の審査基準に基づき、費用対効果を意識した適切な区分を選ぶ
- 登録までの期間を考慮し、事業計画から逆算して早期に出願手続きを進める
正確な情報収集と計画的な手続きで、大切なビジネスアイデアを守りましょう。


ねこ太郎
独立系ベンチャーキャピタルでの投資業務を経て現在は研究機関で起業家の成功要因を分析する専門家です。キャピタリスト時代に数多くのアプリやウェブサービスの立ち上げを支援してきた豊富な経験を持っています。その現場での知見と最新の研究データを掛け合わせゼロからのビジネス立ち上げを成功に導くための実践的なノウハウを発信しています。
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